男の子の部屋にある窓には、中にさらに窓がありました。

おかしな事に、その奥にはもう一つ窓がありました。

窓は扉のように開いたり、パカっと箱を開けるように開いたり、男の子は次々と窓を開けました。

最後には小さな窓がありました。同じくらい小さなレースのカーテンも付いています。

片目をつむってよく覗き込むと、窓の奥には小さな人間が夜ご飯の食事の支度をしていました。

僕はなるべく静かに呼吸をして、鼻息でカーテンが動かないように気をつけました。

小さな人間の一人は、キッチンでシチューのようなものを鍋でコトコトと煮ています。ゆっくりとかき混ぜて、そのうち手に持っている小さなオタマで味見をしました。

小さな丸いテーブルにはお洒落に花を飾ってました。横にはさらに小さな子供の様な人間が歩いてお皿を並べていました。

お鍋をかき混ぜている小さな人間は、何か思いついた様に戸棚から小瓶を手に取りました。

シャカシャカ振るとサラサラと何かが鍋に入りました。

男の子はよく観察してみましたが、その粉が何なのかすぐには分かりませんでした。でも、鼻が何だかムズムズします。


ハックション!


咄嗟にくしゃみが出ました。

あの鍋に入れた粉の正体は胡椒だったのです。

小さな人間はびっくり仰天。なんせ台風の様な突風が吹いて来たのですから。

男の子のくしゃみは先程開けていった窓をも次々と閉めていき、男の子は元の部屋まで飛ばされてしまいました。


「ああ!びっくりした」

尻餅をついた男の子は声を上げました。

そして、先程の小さな窓をもう一度見ようと駆け寄りましたが、部屋の窓はいつも通りで、窓を開けたらただ夜空が広がっているだけでした。